「 ほら ◎◎君 ゲーム 持ってないんだって。 ほら みなさい
持ってない子もいるのよ。あんた そうやって ゲーム ばっかり
やってないの? 」
今度は もう一人の 母親が ゲームに 熱中している 我が子に
注意をしました。
「 ううん そんなことないよ。家も 買ってくれって うるさいから ちゃんと
買ってやってあるの。今日 たまたま 持って来てないだけよ。
てっきり 持って来てると 思ったのに 」
「 あらそう~ やっぱり 持ってるんだ。うちは ず~と やってる。
まぁ こういう時は 面倒でなくて いいんだけどね。
ただ やめさせて 勉強させるのが 大変 」
母親二人は また 子供達 そっちのけで 話し始めました。
僕は 子供のうち 一人が 手持ちぶたさにしているのだから
どうして もう一歩 進んで 座席を替えて
子供どうしを 並べ 二人で 話したらとか 言わないのか
ちょっと 不思議でした。
「 そうなのよね~ うちも勉強しないから 塾行かせてんのに
ちっとも やんないの 」
「 そう うちも 行かせてんのよ。 今 学校だけじゃ ダメでしょ。
一応 やれることだけは やってあげようと思って
やってんだけどさ。子供って なかなかね。
まあ 私達も そうだったから しかたないけどね 」
「 でもさ こっちの 苦労考えると 自分の子供ながら
もうちょっと まじめに 勉強してもらいたいって
思っちゃうのよね。だって 後で困るのは 本人でしょ」
「 そうよね お金のこと考えると ちゃんとやりなさいって
言いたくなっちゃうわよね。でも 確かに もうちょっと
遊ばせてあげたいとは 思ったりもするんだけどね。
でも そんな時は 心を鬼したりしてね 」
「 分かる 分かる 親になって やっと分かるよね。口うるさかった親の気持ち。
まあ、どこの親もそうだよね 」
母親たちは 話題を 子供達の 教育についてかえ グチっぽく 話始めたのです。
「 それにさ ある程度 大人になって 子供とケンカした時
あとで 文句言われるのも 嫌だしね。あたしなんか高校時代
もうちょっと 小学 中学 いいとこ 入れておいてくれれば
高校で勉強 頑張れた気がすんだよね。
だって 中学までの 基礎がないから 高校の勉強 ついていけなくてさ。
結局 行きたかった 大学じゃないとこしか 行けなかったし 」
「 あら どこ? 」
「 A大学 あなたは? 」
「 B大学 」
「 うわっ 頭いいんだ 私も狙ってたんだけど 諦めた 」
「 そうでもないって たまたま 入れただけ 」
母親たちは その後も 教育について グチっぽい話を 続けていました。
しばらく ゲームを持ってこなかった 彼も おとなしくしていて
列車は 淡路町に着きました。
すると 一組の親子が 降りていきました。
残ったのは ゲーム機を 忘れた方の 親子でした。
車内から 友達親子に 手を振ると 母親は 息子を たしなめたのです。
「 もうダメな子ね。なんで ちゃんと 挨拶できなかったの?
◆◆ちゃんは ちゃんと できたしゃない。いつになったら 出来るの? 」
どうやら 息子どうしは 今日が 初対面だったことが 分かりました。
「 毎回 お母さん 恥かいてんだから。何も言わないけど 向こうの親は
挨拶すらできない 教育してるのかって 思ってるんだよ。
毎回 お母さん あんたのおかげで 嫌な思い
させられているんだからね。挨拶くらい できなさいよ。
何度 言わせるの。 男のくせに 自分の名前を言う 勇気もないの?
そんな子供に 育てた 覚えないよ。あんただけだよ。
お姉ちゃんも お兄ちゃんも 皆 挨拶できたよ。
それとも 何か できない 理由でも あるの? 」
「 ・・・ 」
彼は 悲しそうな目をして 下を向いてしまいました。
-続く-
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