ケンカできない子よりできる子に6

「 でも よく それだけで 止めなかったですね 」

 

「 ああ 片方が武器持っていたから やるんなら

 

素手で やりなって モップふっ飛ばしたんだ。 

 

それに パッと見て 分かったんだな

 

Aが Bの予想外の強さに 驚いているって 」

 

「 おお~ すげぇ 」

 

「 だろう~ 俺は けっこう ケンカしてきたから 

 

そういうの すぐ ピーンて きちゃうんだ。

 

それで 二人の実力みて これは大丈夫 すぐ二人

 

へばるって 思って見てた。 案の定 ヘロヘロに

 

なったから やめちゃったろ。もう あの時 二人とも

 

やめたくなっちゃってたんだよ。

 

俺がドローって 言った瞬間

 

二人とも 助かったって 顔してた。

 

だから あの時点で

 

もう この二人は 仲良くなれると 分かった。

 

だから 実力は互角 今日やられても

 

次は勝てるって言ったんだ。

 

それが 分かれば 次にやると

 

互いに同じように 傷つくから 

 

やらなくなるんだな。

 

一方が圧倒的に強いと

 

強い方が また ケンカを売るよ 」

 

「 さっすがですねぇ~。 誰も そんなこと 

 

思ってなかったですよ。この先生 ますます 

 

ケンカに 油注いで しかも 喜んで

 

何考えているんだろうって?

 

異常な 先生だって感じた奴 たくさん

 

いたと思いますよ 」

 

生徒は 当時を振り返りながら 

 

生徒達の思いを 代弁してくれたのです。

 

「 いやいや 心配かけちゃってたんだねぇ~。ごめんな~。

 

ただ ケンカといじめは違うんだよな。

 

俺には それが よく分かってたんだ。

 

ケンカは やっぱり 本人どうしで

 

解決するのが 一番なんだ。

 

だからこそ 仲良くなれる 」

 

「 そうですよね。それは 分かる気がします。

 

実際 あいつら 高三なっても 仲良かったですから 」

 

 「 そっか。そりゃ ケンカしてよかったな。

 

ケンカすれば 少しの青タンや すり傷 たんこぶ 当たり前だよ。

 

こんなもん ほっとけば 治っていくし

 

本人どうしが 仲直りしていく時 

 

相手の力を 認め合ったり

 

反省したりする 材料になる。

 

そこへ それだけ見て

 

親や先生が どちらが 善いとか 悪いとか

 

治療費出せとか 判断を 下すと

 

今度は なかなか直らない

 

心のしこりを つくっちゃうんだな 」

 

「 てことは やたらすぐに 親や先生が 手を出すなって

 

ことですか? 」

 

「 まあ どっちに転ぶか 確実な答えは 分からない。

 

すぐには 答えが出ない時もあるだろう。

 

でも 子供達が持っている 心を衝突から調和へ 変換していく

 

作用を 信じて待つことが 

 

一番 必要だと思ってんだよ。

 

だって 世の中 少し気に入らない奴とか 

 

ちょっかいを 出してくる奴

 

たくさん これから 出会うわけだよ。

 

そこに いちいち 親や上司が 出て行ってたら

 

どうなるよ。そいつは いつまでたっても

 

そういう奴らとの接し方を 身につけられない。

 

もろい人間になっちまうだろ。

 

結果が出てからなら 何とでも 批判できるさ。

 

上が そう判断して 首にされるんなら 俺は

 

それでいいって 思ってたよ 」

 

「 やっぱり 健ちゃんですね。 俺達が大好きな

 

変態教師 健ちゃん 」

 

「 ば~ろ 本当に 謙譲の美徳を知らない奴らだ。

 

おい ビール 頼んでくれ 」

 

こんな 感じで 飲んだのです。

 

 -続く-