今まで見えなかった いじめの構造が この時見えたのです。
『 いじめてくる奴って 結局は 八つ当たり 』
まだ 彼らの中にある「 認められていない自分 」が
うっぷんを生み出していることは 分かりませんでしたが
「 このうっぷんを どこかで 晴らしたい 」
という無意識が いじめの根底に流れていることは 分かったのです。
僕は 彼が 哀れに 思えてきました。
だからといって 彼の行動は 許せませんでした。
心の葛藤は分かりましたが それ以上 彼の気持ちは
理解できませんでした。
というよりも だから どうして 自分の葛藤のはけ口として
他人を利用しようとするのか?
ますます 僕には 分からなくなってしまったのです。
ただ 少し前の 僕であれば
「 ふざけんな おまえだって 苦しいんだろ!
だったら 何で 俺の苦しさを 分かろうとしない! 」
と 怒りが こみ上げてきて 彼に突進していたと思いますが
次の気づきのおかげで それはしなかったのです。
何度も 登場している
『 結局 人間は 分かりあえない。自分のことすら 分からないのだから
他人のことなど 分からなくて当然。そして 相手が 僕の気持ちを
理解できないのも 当然。だって 僕じゃないんだから 』
です。
「 いじめって 結局は 心の弱い人間のすることなんだな。強い奴は
八つ当たりなんかしない。いじめの正体 見たりって感じだ。
頭には来るけど 前みたいに 怖くなくなった気がする 」
僕の心に 少し余裕みたいなものが 生れたのでした。
僕は 彼に もう一つ 聞いてみました。
「 なんで 俺なんだ。なんで 俺を うっぷん晴らしに 選んだんだよ? 」
彼の 答えは 少し 悲しいものでした。
彼は 僕のことになったとたん じょう舌になったのです。
「 おまえ 普通じゃないからだよ。 醜い顔の奴 いじめても 誰も
悪いとは思わないんだよ。ちょうどいいはけ口なんだよ。おまえは
そういう役目のために 生まれてきたんだ。 気づいて ないのかよ 」
「・・・・・・・・・」
返す言葉が ありませんでした。
「 やっぱり 分かんない。 どういう考え方なのか さっぱり 理解できない。
でも いいや 分からなくていい。 僕は そんなために 生まれてきたん
じゃない。 腹を立てる必要もない 」
僕は 走って 彼から 逃げ去ったのです。
-続く-
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