僕は 右腕を 彼の首に巻きつけ 手首近くの骨を のどに 密着させました。
倒れながら 彼の首を 右脇下に押し下げ、両足を彼の背中で クロスさせまし
た。 そして やや腹筋運動するかのように 上体を持ち上げながら
両足両腕で 絞り上げたのです。ぐいぐい絞り上げました。柔道をやっているお兄
ちゃんに教わった技でした。僕は習った技の中で 相手の後ろに回って使う 裸締
めという技が得意だったのですが 押し倒された場合に使えと 三角締めと一緒に
教わっていたのです。
Eはたまらす 地面を叩いて 「 参った 」の合図をしてきました。
僕は 少し力を緩めて Eを 問い詰めて 聞きました。
「 何で俺のことを 目の敵にすんだ。 おまえに 何かした覚えはないぞ 」
すると Eは 次のように言ったのです。
「 うるさい 逆らうおまえが悪いんだ。逆らうから 憎たらしくなるんだ。
おまえも 俺みたいになって欲しかった。そして 俺の子分にしたかった 」
僕は 思わず 罵倒しました。
「 ふざけんな 誰が おまえみたいになるか。おまえの子分になる
くらいなら 死んだ方がましだわい 」
Eは このケンカの後 決して一人では 僕に手を出してこなくなりました。
彼は 複数で僕を襲う時 これまで以上に 憎しみの目を向ける時もありました。
でも 時々 こんなことを言って 僕から目をそらすようになったのです。
「 何でだよ。おまえバカか? 何でやられても 逆らえるんだよ 」
今までも 同じような言葉を 投げかけてきていたのですが
これまでと 明らかに 言い方が異なっていました。
そして ノートへの落書きも しだいになくなって 行ったのです。
ただ けっして いじめを止めることは しませんでした。
その後 隠れ家で Eの言葉が ふと浮かんだ時
Eが どうして 僕に 憎悪の目を向けたのかが 分かりました。
-続く-
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