親が決断すべき時2

「 おまえ そいつのこと まだ怒ってるのか? 」

 

「 いや別に あれだけやれば せいせいしてますよ。 小学校時代 あんな 

 

いばってたくせに 惨めでしたよ。もういつもキョドって(おどおどして)ました。

 

面白かったですよ 」

 

普段は見せない 彼の病んだ心に 僕は驚きました。

 

彼の心には いじめた相手への 反省のかけらもありませんでした。

 

「 おまえさ 奴隷制度って どう思う? 」 

 

彼に聞くと

 

「 そりゃ間違っていると思います。黒人に生まれただけで あんな扱い受ける

 

いわれはないと思います 」

 

「 だよな 俺もあの時代 黒人に生まれていたらと考えたら ぞっとするよ。

 

だったら 分るだろ そいつにしたことが正しいか 」

 

「 いやいや あいつは 奴隷に相当しますって 」

 

「 バカ野郎! おまえ それ 俺に本気で言っているか? 」

 

僕は 彼を真剣な目で見据えました。

 

めったに怒らない僕が怒ったので 彼は緊張した顔つきになりました。

 

「 いや ノリで 」

 

「 おまえ 人をノリで奴隷にすんのか? 人が人を奴隷にするなんて 許される

 

ことじゃないぞ 」

 

「 いや すみませんでした。言い過ぎました 」 

 

「 バカ! 俺に謝ってどうする。謝る相手が違うよ 」

 

「 えっ でも あいつここにはいないし 」

 

「 いないくもいいんだ。いつでもいい 空見て 心が落ち着いたら 一言 ごめ

 

ん 悪かったって謝ればいい。友達を奴隷にするって 自分の心を 腐った心の

 

隷にするってことなんだぞ 」

 

少しの沈黙の後 彼はこう言いました。

 

「 でも そんなんで 許してくれますかね 」

 

「 まず そこから始めろよ。それで もし どうしても 本人に会って 謝りた

 

くなったら 会って謝れよ。おまえに任せるよ 」

 

「 はい 分かりました 」 

 

「 おまえさ 本当はひどいことしたと 分かってるだろう。そういうことした自

 

分を 本心では 許していないはずだ。空に向かって謝るって 相手だけでなく 

 

そういう 腐ったことしてしまった自分に 謝るってことでもあるんだよ。

 

そうすれば さっきみたいな 腐った言葉 言わない人間になる。誰が 聞いても

 

気持ちいいもんじゃない。おまえは それに気がついていない。素直になるって

 

時々 辛いもんだ。でもな そうしないと 一生 さっきみたいな 腐った言葉を

 

く。 一度やってみな そうすりゃ スッキリするよ 

 

後日 彼から空に向かって謝ったとの報告がありました。

 

ただ 本人に謝ったかどうかは分かりません。でも それをしなかったとしても 

 

彼を責めようとは思いません。

 

-続く-