すると
「 刀を外し 着物も脱ぎ ふんどし姿になれ。
そして 俺の又ぐらを くぐって ワンと泣き お許しください 」
と言えば許すというのです。
侍は言われた通りにして 子供を救うのですが
バカ侍達は 「 それでも武士か 」と高笑いします。
さらに 観衆まで
「 侍らしく戦って助ければいいのに 腕がないから
あんな ぶざまな姿を さらすことになったのだ。
だらしのない侍だ 」とバカにするのです。
僕は このような場面を見るたび 自分に起こったいじめを思い出します。
「 おんなじだな。他人に恥をかかせて喜ぶ。
相手を支配することで 自分の方が上だと思い知らせる。
そしていい気持ちになる。最低だな。
僕も この侍と同じことを 何度もやれと言われ
ついに一度 やりそうになった。
でも 途中でできなくなった。
だが やらなくて 本当によかった。
やっていたら きっと今も心の傷として 残っていたかもしれない 」
僕は いじめられている時 遊びに入れる条件として
「 仲間に入れてもらいたかったら ミミズの這うマネをして
俺の又下をくぐって ワンじゃなく 私はミミズですと言え。
そしたら 考えてもやる。もしかしたら 踏みつぶすかもな 」
と言われていたのです。
そのたび 断って 一人ぼっちになっていました。
しかし 心の弱っている時 一度だけ
ミミズの真似をして 彼らの またぐらを うねって渡ったのです。
それも 三人が並んだ トンネルのような空間を
バカにした笑いの中 うねって渡り切ったのでした。
-続く-
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