レッツ・ポジティブ1④

「先生、もっとポジティブに見て下さいよ。

そしたら、俺達の気持ちも、分かりますって。

もっと中立な立場で、生徒を見られるように

なりますって。こいつは社会に出たら、

必ずデブって嫌われるんですって。

免疫ないまま、社会出て、いじめられたら、

つぶれちゃうんですって。

だから、免疫つけておかなくっちゃ。

ここは学校ですよ、勉強だけでなく、

そういった精神修行もしなくちゃ。

先生達がやってくれないから、

俺達がやってやっているんです。

ポジティブないじめですよ。

普通のいじめじゃないんです。

こいつのためなんですって」

僕は生物室に三人を連れていき、

二人を隣の実験室で待たせました。

まず被害者に、いつから暴言を吐かれているか尋ねました。

すると、1か月ほど前からだと分かり、少しほっとしました。

もっと長い間、耐えてきたのでは、

誰にも気がついてもらえず

大変だっただろうと思っていたからです。

しかし、1か月であろうと、とても辛いことです。

話を聞いていると、いじめのせいで、

勉強に集中できず悩んでいること。

また、高校最後になって問題を起こし、

高校生活を台無しにしたくないので、

我慢できるなら我慢しようと思って、耐えていること。

担任には、どうしても知られたくないこと

(理由はここでは書けません)が分かりました。

「分かった。辛かったね、頑張って来たな。

でも、もう我慢しなくていい。俺がついている。

これから、先生があいつらを観察しているから、

何かあったら、すぐおいで。

それからあんな言葉気にするな。

君は脂ぎっても臭くもない。とてもやさしい

雰囲気を与えてくれる。自信をもっていい」

と伝え、帰宅させました。

その後、いじめていた二人を呼び、

真剣に話しました。

彼らと話しているうちに、

彼らは間近に迫った

大学進学を決める試験に対する勉強が

上手く行かず、苛立っていて、そのはけ口として、

彼をターゲットに選んだということが分かりました。

僕は、いかなることがあっても、いじめてよい理由などないこと。

だから、いじめに中立などなく、いじめる奴が悪いこと。

ポジティブないじめなんてふざけたものは、ありえないことを

少し、自分の体験を交えて話しました。

彼らは、涙ぐんで謝りました。

僕はそれでも許さず、彼らに問いかけました。

-続く-