「大丈夫?」は思いやりの原点4

「あっ、すいませ~ん。大丈夫ですから、ほら早く」

突然、男の子の隣に立っていた女性が、 声をかけて来てきました。

「えっ、 あ、はい」

僕は驚きました。

電車を待っている間、

僕は、男の子が一人で そこにいるのだと思っていたのです。

隣にいた母親は、携帯を覗き込んで、まったく他人のようでした。

母親は早口で謝ると、男の子の手を引っ張り、

急いで電車に乗り込みました。 僕も続いて乗り込みました。

「ほら、ボケッとしてるからでしょ。 いつも言ってるでしょ 、

乗り換えの時は人が多いんだから。 気をつけなさい。

人様に心配かけないの!」

お母さんは、面倒くさそうに、子供に話しかけています。

次の駅で乗客が降りて、入り口そばに空いた席ができると、

すぐさま、子供の手を引き、座り込みました。

「良かったね、座れて」

「うん、でもすぐ降りるんでしょ」

「ちょっとでも座れれば楽じゃない」

「うん、あといくつ」

「東京だから、あと一つか二つよ」

こう言うと、スマートフォンを取り出し、何か調べ始めました。

このあと、息子は無言で外の景色を見て、

隣で母親は携帯とにらめっこ状態。

やがて、東京に到着し、僕は彼らより早く車内から出ました。

僕は、何とも言えないさみしさを感じました。

どうして子供に 「痛くなかった、大丈夫?」

と聞いてあげないのだろうか?

僕が見ていた限り、

男の子は、ボケッとしていたわけではありませんでした。

たとえ、そうだとしても、

子供が誰かにぶつかられて、倒れたのです。

子供の体を心配をしないのだろうか?

「大丈夫?」どころか「大丈夫ですから」です。

そして「人様に迷惑かけないの」と叱っています。

子供に対して、無関心過ぎる気がしました。

子供に対してこういう接し方をしていたら、

子供も親に対してだんだんと、無関心になってしまいます。

子供に対して、こうなのだから、

他人に対しては、 もっと無関心なのだろうなと感じました。

「この母親は、自分の親から、大丈夫? という言葉を

ほとんどかけてもらってきていないのだろうな」 と、思いました。

「近年、増えてきたと感じずにはいられない、信じられないほど、

他人に無関心な子供たちは 、こうしてできてしまうのだな」

僕は、そう思いながら、短いため息をついたのです。

何気ない思いやりの一言、「大丈夫?」ですが、

この一言の積み重ねが、他人に関心を持ち、困っていそうであれば、

助けていく心を、育んでいくのかもしれません。

仕事で疲れて帰って来た夫、妻、

塾で頑張って来た子供達、それぞれが

「お帰り~」 「遅くまでご苦労様 」 「疲れてない、大丈夫?」

と、短い思いやりを交わす毎日こそ、自分達の心を癒やし、

さらに他人を思いやる心の余裕を、作り出していくのだろうと思います。

 

全てのお母さんではありませんが、 子供を連れて外出した時は、

目を離さないでいて欲しいと思います。

同じ方向を見て、他人に関心を向け 、

できれば、それらの事柄に対して 、思いやりがこもった言葉を

口にして欲しいと思います。

子供は携帯画面ばかり見ている母親を見ていても、

ちっとも楽しくありません。

気がつかないうちに、どこかに行ってしまいかねません。

それに特に駅のホームはとても危険な場所です。

携帯見ないで、きちんと子供と同じ方向を見ていてあげて下さい。

-終わり-