「あっ、すいませ~ん。大丈夫ですから、ほら早く」
突然、男の子の隣に立っていた女性が、 声をかけて来てきました。
「えっ、 あ、はい」
僕は驚きました。
電車を待っている間、
僕は、男の子が一人で そこにいるのだと思っていたのです。
隣にいた母親は、携帯を覗き込んで、まったく他人のようでした。
母親は早口で謝ると、男の子の手を引っ張り、
急いで電車に乗り込みました。 僕も続いて乗り込みました。
「ほら、ボケッとしてるからでしょ。 いつも言ってるでしょ 、
乗り換えの時は人が多いんだから。 気をつけなさい。
人様に心配かけないの!」
お母さんは、面倒くさそうに、子供に話しかけています。
次の駅で乗客が降りて、入り口そばに空いた席ができると、
すぐさま、子供の手を引き、座り込みました。
「良かったね、座れて」
「うん、でもすぐ降りるんでしょ」
「ちょっとでも座れれば楽じゃない」
「うん、あといくつ」
「東京だから、あと一つか二つよ」
こう言うと、スマートフォンを取り出し、何か調べ始めました。
このあと、息子は無言で外の景色を見て、
隣で母親は携帯とにらめっこ状態。
やがて、東京に到着し、僕は彼らより早く車内から出ました。
僕は、何とも言えないさみしさを感じました。
どうして子供に 「痛くなかった、大丈夫?」
と聞いてあげないのだろうか?
僕が見ていた限り、
男の子は、ボケッとしていたわけではありませんでした。
たとえ、そうだとしても、
子供が誰かにぶつかられて、倒れたのです。
子供の体を心配をしないのだろうか?
「大丈夫?」どころか「大丈夫ですから」です。
そして「人様に迷惑かけないの」と叱っています。
子供に対して、無関心過ぎる気がしました。
子供に対してこういう接し方をしていたら、
子供も親に対してだんだんと、無関心になってしまいます。
子供に対して、こうなのだから、
他人に対しては、 もっと無関心なのだろうなと感じました。
「この母親は、自分の親から、大丈夫? という言葉を
ほとんどかけてもらってきていないのだろうな」 と、思いました。
「近年、増えてきたと感じずにはいられない、信じられないほど、
他人に無関心な子供たちは 、こうしてできてしまうのだな」
僕は、そう思いながら、短いため息をついたのです。
何気ない思いやりの一言、「大丈夫?」ですが、
この一言の積み重ねが、他人に関心を持ち、困っていそうであれば、
助けていく心を、育んでいくのかもしれません。
仕事で疲れて帰って来た夫、妻、
塾で頑張って来た子供達、それぞれが
「お帰り~」 「遅くまでご苦労様 」 「疲れてない、大丈夫?」
と、短い思いやりを交わす毎日こそ、自分達の心を癒やし、
さらに他人を思いやる心の余裕を、作り出していくのだろうと思います。
全てのお母さんではありませんが、 子供を連れて外出した時は、
目を離さないでいて欲しいと思います。
同じ方向を見て、他人に関心を向け 、
できれば、それらの事柄に対して 、思いやりがこもった言葉を、
口にして欲しいと思います。
子供は携帯画面ばかり見ている母親を見ていても、
ちっとも楽しくありません。
気がつかないうちに、どこかに行ってしまいかねません。
それに特に駅のホームはとても危険な場所です。
携帯見ないで、きちんと子供と同じ方向を見ていてあげて下さい。
-終わり-
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