燃え上れ 俺のコスモ 1/3

 

「燃えあがれ、俺の小宇宙(コスモ)! 」

 

突然ですが、

 

このフレーズ ご存じでしょうか?

 

15年ほど前の授業中のことでした。

 

珍しい下敷きを持っている生徒がいました。

 

高校生の下敷きなのに アニメ下敷きなのです。

 

僕はその懐かしい絵柄に 思わず声をあげました。

 

「これ 聖闘士聖也だろ。これおやじの下敷きか? 

 

懐かしいな~。20年以上前の漫画だよな」

 

そう 冒頭に書いたフレーズは、僕と同年代の男なら

 

だいたいが知っている漫画 

 

『聖闘士聖也』の名台詞なのです。

 

生徒は教えてくれました。

 

「先生 聖闘士聖也 またやっているんですよ。

 

おそらく 新シリーズだと思いますよ。

 

燃え上れ 俺のコスモって かっこいいすよね 」

 

「うわっ 懐かしいそのフレーズ ペガサス流星拳だろ 」

 

「でも 笑えますよね マッハ1以上で

 

パンチ繰り出すんですよね」

 

「そうだっけ? 実際やったら、ちぎれるよな腕が。

 

人間業じゃないけど 人間なんだよな 」

 

「先生 シルバーセイントは、マッハ5ですよ」

 

「まじか ははは それは覚えてなかったな。

 

じゃあ ゴールドは?

 

「光速です」

 

「おお~ 俺と同等か」

 

「ふふふふ 先生 何歳ですか? もう幼いんだから 」

 

「あっ おまえ ペガサスケンちゃん拳で 

 

地球外飛ばすぞ~」

 

この漫画、1980年代だと思いますが、

 

少年ジャンプで掲載されていました。

 

作者の車田正道さんは、

 

聖闘士聖也の他に

 

「リングに賭けろ」「サーキットの狼」など

 

名作を残しています。

 

聖闘士聖也について ちょっと解説しておきます。

 

アテネと呼ばれる女神のために 

 

戦う戦士をセイントと呼び

 

その実力によって

 

ブロンズ、シルバー、ゴールドの

 

3階級に分かれています。

 

主人公の聖也は一番下のブロンズのセイントです。

 

それぞれのセイントは、クロスと呼ばれる鎧? 

 

を身にまとい戦うのです。

 

ゴールドセイントならゴールドクロスを

 

まとっているわけです。

 

聖也は天馬星座を守護するブロンズセイントで

 

「ペガサス流星拳」が必殺技です。

 

物語は神々の争いに巻き込まれた

 

セイントどうしが戦うことになります。

 

ブロンズ、シルバー、ゴールドの実力には

 

大きな差があるとされているのに

 

聖也は 次々と格上のシルバー、ゴールド戦士を

 

撃破していくのです。

 

聖也の戦いは パターン化されていて

 

分かってはいるのだけれども

 

これが 読者の心を揺さぶっていました。

 

そのパターンとは 次のようなものです。

 

格上のセイントに向かって

 

聖也がペガサス流星拳を放ちます。

 

ところが平然としている相手。

 

聖也が放つ必殺技が通用しません。

 

そして相手の必殺技が繰り出され、

 

聖也は大きなダメージを受けます。

 

この時、吹き出しにカタカナで必殺技の

 

名前が示されるのですが、

 

ほんの一瞬で繰り出される技と同時に

 

こんなにたくさん叫ぶことは不可能だろと

 

つっこみたくなるほど、長い名前なのです。

 

たとえば、誰だったか

 

「ギャラクシアンエクスプロージョン!!

 

(間違っていたら、ファンの皆さま、

 

ごめんなさい。そういえば、敵味方は分からないけど

 

廬山なんなとなんとかていう技もあったな・・・)

 

でもこれがまたこの漫画の楽しみでもありました。

 

後に北斗神拳でケンシロウが使う技の名前は、

 

漢字で分かりやすく、なかなかいかしていましたが、

 

聖闘士聖也に出て来る名前は

 

カタカナで、意味がよく分からないものの

 

すごい技だと分かる名前で良かったと思います。

 

話を戻します。

 

それでもなんとか聖也は立ち上がり、

 

再び ペガサス流星拳!

 

しかし またもや 相手は無傷。

 

「無駄だ、効かぬわ、死にぞこないが」

 

今度こそ、とどめとばかり、

 

相手の必殺技が聖也を襲います。

 

ガシャーン!

 

またもや相手の必殺技を食らい、

 

宙を舞いながら落ちて行く聖也。

 

吹き飛ばされ、ピクリとも動きません。

 

「ふっ」

 

終わったと勝利を確信する相手

 

ところが・・・

 

「なにぃ~!」

 

2度と立ちあがれないほどの

 

ダメージを受けているはずの聖也が、

 

ふらふらと立ち上がるのです。

 

「なぜだ、なぜ、立ち上がれる! 

 

この死にぞこないがぁ~」

 

恐怖の表情を浮かべながらも、

 

必殺技を聖也に炸裂させます。

 

ついに絶命したかのような表情で

 

地面にたたきつけられる聖也。

 

今度こそ倒したことを確信し、立ち去ろうとする相手。

 

だが、しかし、・・・・・

 

振り返る相手の目の前には

 

またしても聖也が立ち上がっているのです。

 

「まさか、どうして・・・・」

 

瀕死の状態でありながら、目が死んでいない聖也。

 

ついに あの名台詞 

 

「燃えあがれ、俺のコスモ!

 

絶叫し、自身の戦闘能力を極限まで高めていきます。

 

そして再び、

 

「ペガサス星流拳」

 

「バカめ、何度やっても同じだということが

 

分からないのか、効かぬわ、そんな技、・・・! 」

 

余裕を持って、ペガサス流星拳を受ける敵。

 

「なにぃ! うおおお、この力はうわわわわ~ 」

 

相手は毎回のようにこのパターンでやられていくのです。

 

毎週、コウちゃんとワンパターンに笑いながらも

 

このパターンに心躍らせていました。

 

実はこのパターン、下巻②で紹介した

 

コテンパニヤリ法にすごく似ているのです。

 

だから、僕はにやにやしながら、

 

この漫画を読んでいました。

 

そして「燃えあがれ、俺のコスモ」は、

 

頑張ろうとする人間にとって、

 

すごく影響のあるフレーズだと感心してしまいました。

 

僕の話になりますが、

 

上級生からのいじめに苦しんでいた僕は、

 

自分より強い相手にどうしたら勝てるかということを、

 

不良のお兄ちゃん達に相談したのです。

 

その結果、「相手が根負けするまで、

 

やられても立ち上がり向って行け。

 

やられてもニヤリと笑え」

 

と訳の分からないことを言われたのです。

 

これは 何度倒されても立ち上がる聖也そのものです。

 

この漫画がヒットした理由はいろいろあると思います。

 

僕自身は、最大の理由は次のように思っています。

 

「試練に出会った時、誰もが持つ諦めの気持ちと

 

本当は頑張って前に進みたいという気持ちの葛藤、

 

諦めず頑張った結果、奇跡を得ることができたことを、

 

具体的に絵にしたからだ」

 

架空の物語であったとしても、

 

漫画であったとしても、

 

人の心が求めている本質は同じだからです。

 

-続く-